吉備路をゆく
前置き
3/8に有給休暇を取って岡山へ2泊3日の旅行に行ってきました。 今回の旅の主目的は古代吉備国にまつわるものを見聞することでした。
1日目:岡山市街
予定通り朝早くに出発したのに、新幹線が人身事故で止まってしまって岡山駅に着いたのは14時前になってしまいました。
第一の目的は岡山市立オリエント美術館。 岡山駅から歩く予定だったのですが、少しでも時短するため、路面電車に乗って向かいました。
「シティ・ライフの始まり、オリエント」というテーマの展示が興味深かったです。 個人や村の単位で全てを賄わないといけなかったのが、様々な職能を持った人が分業することで都市化されていくという流れに沿って、各職業にまつわる品々が展示されていました。
次は岡山県立美術館に行く計画だったのですが、予定より大幅に遅れてしまったのでスキップして、林原美術館に向かいました。 短歌とその詠み人が描かれた絵画などの展示がありました。
林原美術館から路面電車の城下駅に向かう途中、岡山城が見えました。 岡山城と後楽園は昔に見にいったことがありますが、またいつか行きたいところです。
岡山駅近くのアパホテルにチェックインし、夕食を食べるために岡山駅の地下街へ繰り出しました。 一番街にある八閣というお店で岡山名物尽くしの定食、岡山御膳をいただきました。 そして牛窓産しらす入り卵焼きを追加注文しました。 旅先ではなるべくご当地の料理を食べたいものですね。
2日目:吉備の中山
翌朝の朝食はホテルのバイキング。 ままかりや、えびめしなどの岡山名物を堪能しました。
ホテルをチェックアウトし、岡山駅から桃太郎線(吉備線)の列車に乗りました。 この路線はいつから桃太郎線という名称に変わったのでしょうか?
備前一宮駅で下車し、いよいよ今回の旅の主目的である吉備の中山周辺を巡ります。
吉備の中山は備前と備中にまたがる神奈備山で、古代吉備国の中心的場所です。 古今和歌集に
まかねふく
吉備の中山
帯にせる
細谷川の
音のさやけさ
という歌があります。 「まかねふく」とは「真金吹く」の意味で、「吉備」に掛かる枕詞です。 吹くというのは鞴などで空気を送ることを示しているのでしょう。 この枕詞からも吉備国が優れた製鉄技術を持っていたことが分かります。 そして、それゆえに吉備国はヤマト王権に対抗しうる力がありました。
そんな吉備国を支配していたのは温羅(うら)という者で、百済の王子とも伝えられています。 製鉄技術を伝えた渡来人たちの長だったのでしょうか。 温羅の一族を討つためにヤマト王権は四道将軍の一人である吉備津彦命を派遣しました。 そして吉備津彦命は見事、吉備国を平定したのです。 これが桃太郎伝説の元になっています。 吉備津彦命が桃太郎のモデルで、温羅が鬼のモデルというわけですね。
その桃太郎こと吉備津彦命を祀る神社が吉備の中山の麓、備前と備中それぞれにあります。 まずは備前一宮、吉備津彦神社です。
境内案内図のとおり、手前に神池があってその真ん中に参道があるというのが独特ですね。
池の左側の小島である亀島の先に環状列石があります。
隋神門、安政の大石灯籠、さざれ石、桃太郎像、井戸など見どころが沢山あります。
また、温羅も境内社で祀られています。
計画ではお昼ごはんを食べてから吉備の中山に登る予定だったのですが、吉備津彦神社をあらかた見終わってもまだお昼には早い時刻だったので、思い切って登山開始しました。 登山ルートは下のリンク先からダウンロードできる地図を参考にしました。
吉備の中山ウォーキングマップを作成しました!|日本遺産ポータルサイト
境内の横に登山口があります。
メインルートの最初の分岐を右へ行けば元宮磐座に辿り着きます。 道標があるので迷うことはありません。
元宮磐座と八大龍王のある場所は開けていて、少し見晴らしの良い場所があります。 経塚はなんだかよく分かりませんでした。
ここからメインルートを戻らずに、天柱岩の方に進みました。 吉備の中山はメインルートを外れると、落ち葉や粘土質の地面、苔などで滑りやすい場所が多いので要注意です。 実際、天柱岩の近くで滑って転倒しそうになりました。 天柱岩のあるところは見晴らしが良いです。
道路(吉備の中山みち)が見えるくらいまで下りてきたものの、下山できそうなところを見つけられませんでした。 仕方がないので道路に沿って吉備津彦神社の方面に歩いていくと、ホテルの廃墟がある地点で道路に出ることができました。
時間に余裕があったので、お昼ごはんを食べるために吉備の中山みちを通って吉備津彦神社の方に戻りました。 途中、晒し首を晒す場所と、ねむり石があります。 ねむり石は地震で倒れたとかではなく、別の場所から移設した時にあえて横たえたのですね。
お昼ごはんは、吉備津彦神社から少し離れたところにある「うどん一歩」というお店でいただきました。 元々、ここで食べる計画だったのです。
お店の名前が付いた「一歩うどん」。 温泉玉子が桃太郎を表し、ごぼう、ちくわ、えびの三種の天ぷらが犬、猿、雉を表し、肉が鬼の群れを表しています。 というのは嘘です(いや、嘘じゃないかもしれませんが)。 天ぷらがねっとりした食感で美味しかったです。 これで980円なので安いですね。 ごちそうさまでした。
再び吉備の中山みちを歩き、備前と備中の境界を流れる細谷川に掛かる両国橋を渡ってすぐの福田海(ふくでんかい)という宗教施設(?)のところから吉備の中山に登り直しました。
少し登ると分岐があります。 吉備の中山に登るルートは右が正解ですが、法螺貝の井戸を見るために一旦左に進みました。
法螺貝の井戸のところは行き止まりなので、引き返して先の分岐まで戻り、藤原成親遺跡の方へ進みました。
さらに登ると開けた場所に出ます。 そこにはダイボーの足跡と呼ばれる大きな窪地(写真では分かりにくいですが)があります。
ダイボーとは大きな坊さん(大坊)の意味である。 (中略) 日本各地に伝承されている大太郎法師(だいだらぼっち)と似ている。
という説明が書いてありますが、個人的にはだいだらぼっちと同一視してもいいのではないかと思います。
だいだらぼっちは たたら製鉄と関係があるとされているようですが、ググっても もののけ姫のことばかりでちゃんとした文献は見つけられませんでした。 たたら製鉄というと出雲をイメージしますが、実はたたら製鉄のルーツは兵庫県宍粟市にあるとも言われています。 播磨国志相郡岩鍋(現在の宍粟市千種町岩野辺)という所にたたらの神様である金屋子神が降臨した後、白鷺に乗って出雲の地に行ったという伝承があるそうです。 製鉄について調べてみるのも面白そうですね。
さて、話が逸れましたが、この開けた場所の付近には八畳岩古墳、八畳岩、環状石籬などがあります。
吉備の中山三角点のある場所は分かりにくい所で道の横から登っていく必要があります。 鏡岩への道標が目印です。
登ったところは開けていて、三角点の他にアンテナがありました。 そこから少し下ったところに鏡岩があります。
鏡岩から引き返して元のルートに戻り、更に進むと柵で囲われた中に穴観音があります。 穴観音の穴に耳を当てると観音様の声や潮騒が聞こえるそうですが、僕には特別な音は聞こえませんでした。
そのままメインルートを進んで、備中国に入ってすぐのところに御陵(中山茶臼山古墳)、すなわち吉備津彦命の墓があります。
御陵の近くに開けた場所があって、岡山市街が見えます。
少し下ると舗装路に出るので、あとは舗装路沿いに進めば備中一宮、吉備津神社に着きます。 長い廻廊が特徴的ですね。
境内に鳴釜神事が行われる御竈殿というのがあります。 鳴釜神事というのは鳴動するお釜の音の大小長短によって吉凶禍福を卜占する神事です。 吉備津彦命に討たれた温羅は首だけになっても唸り声を上げたので、温羅の首を犬に食わせてその骨を御竈殿の地中に埋めたが、それでも唸り声は鳴り響いたそうです。 ある時、吉備津彦命の夢に温羅の霊が現れ、温羅の妻に神饌を炊かせるよう告げました。 そして、幸があれば釜は裕かに鳴り、禍があれば釜は荒々しく鳴ると告げました。 これが鳴釜神事の由来です。 中は撮影禁止なので写真はありませんが、実際に炊かれているお釜や鬼の面などがありました。
北隋神門から出たところに矢置岩があります。 吉備津彦命が温羅と戦う時に、ここに矢を置いたそうです。
吉備津神社を後にして、吉備津の松並木を通って吉備津駅へ向かいました。
吉備津駅からJR桃太郎線の列車に乗って服部駅で下車。 そこから宿までは徒歩でした。 吉備の中山を歩いている時にパラパラ雨が降ってきたのですが、すっかり止んで晴れの国 岡山を実感できました。
服部駅から30分くらい歩いて国民宿舎サンロード吉備路に到着。 とても綺麗なお部屋でした。 ロビーに吉備の国を支えた柱があります。 朝鮮式山城「鬼ノ城」の西門に使われた柱と同じ大きさだそうです。 旅の疲れを温泉で癒しました。
夕食は花籠御膳。
3日目:倉敷
朝食はバイキングです。
サンロード吉備路から総社駅まで送迎バスで送ってもらいました。
総社からJR伯備線の列車に乗って倉敷へ。 倉敷は昔の景観の中に華やかさがあって良いですね。
お店や川沿いの景観も良いですが、観光客が見向きもしない細い路地とかも良いですね。
食べ歩きも倉敷の楽しみの一つですね。 ただし、串団子は美味しくなかったし、店員が感じ悪かったのでお勧めしません。 手焼き煎餅は普通だったので、スーパーで煎餅を買う方が良いですね。 それと、ゴミ箱がないので困りました。
cafe BISCUITのビスキュイセットはお洒落でオススメです。
アイビースクエアのお店のキューバサンドと倉敷産ごぼうのクリームスープは美味しかったです。
倉敷プリンも濃厚で美味しかったのでオススメです。
もっコロは岡山白桃が入ったクリームコロッケで、ほんのり甘いです。 不味くはないですが、これは話のネタ程度ですね。
倉敷観光は特に計画を立てていなかったのですが、桃太郎のからくり博物館だけは見ようと思っていました。 とても面白かったのでオススメです。
あとがき
今回の旅はとても充実したものになりました。 吉備路は他にも備中高松城跡を見てみたいので、またいつか訪れようと思っています。 倉敷もとても素敵な街だったので、いずれまたじっくり観光しに行こうと思いました。 書き出すとキリがないので、このあたりで筆を置くことにします。 長々とした駄文を読んで下さってありがとうございます。